2010年7月24日土曜日

インプロが息ずく町ブパタルにて−3

 ・会場を祭祀の場へと変えるペーパー・インスタレーション

 私はかつて台湾や韓国で葬送儀礼の調査に関わった事がある。祖先を敬い崇拝する様々な祭祀の中で斎場を飾る紙の装飾に強く引かれた。日本語の上(カミ:heaven)− 神(カミ:god)− 紙(カミ:paper)とゴロ合わせのように繋いでいくと,いにしえの昔貴重であった紙の装飾を持って祭場を飾り,神(先祖の霊)と交信した事も頷ける。 
 近年は静岡周辺で御神楽を観歩いている。人里離れた山里で催される収穫や出産に感謝し,平安や豊穣を祈願して神に奉納される音楽や舞いを,今回の公演に重ね合わせた。演者、観客、そして死者の魂がともに集い,出会いに感謝し,平和を祈り,共に祭りを祝う。そんな空間をイメージして,神の舞い降りる聖なる場所としての紙のインスタレーションを企画した。
 すると、サスポータス氏が過去数10年の間に撮りためた彼と交流のあった人達のポラロイドのポートレートを飾れないかという。800枚にも及ぶ写真の中から彼と深い絆で結ばれた人、あるいはORTと関係のあった人々のポートレート40枚程選び,舞台の正面には大野一雄、ジャン・サスポータス、ピナ・バウシュ、ペーター・コバルト等の写真をインスタレーションの中に散りばめた。会場の側面にも一列に30数名のポートレートを展示した。
 こうしてORT(ドイツ語で場所を意味する)は,死者の魂も交えた祭祀の場と化した。

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